堆肥の役割
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なぜ堆肥が必要なのか?
 植物の発芽に必要な3要素は「水」「空気」「温度」、さらに生育に必要な要素は「養分」「光」の2つといわれています。堆肥が無くても確かに植物は育つのです。では、なぜ堆肥が必要なのでしょうか?
 「水」「空気」「温度」「養分」「光」の5要素は、植物が生きる為に必要な最低限度のものです。人間の「衣」「食」「住」に例えると、1番基本的な「食(衣)」にあたると考えてよいでしょう。土や堆肥は植物に快適な「住」を与えるのです。快適な環境にあってこそ、充分に養分を吸収し、丈夫に育つことができるのです。
土の役割
 堆肥は土壌を肥沃にするとか、地力を増すといわれます、堆肥の効果を理解するためには、まず植物と土の関係を理解しておく必要があります。土の役割は主に3つあります。良い土、つまり「肥沃な土・地力のある土」はこれを満たしているのです。逆に多くの土は、そのままではこの役割を充分に果たすことができません。ここで堆肥の登場となるのです。
堆肥の効用
 堆肥には良い土を作る土壌改良材の役割があります。
 しかし、具体的に堆肥が一体何をしてくれるのか?まずはそこから見てみましょう。
物理性の改善
 土の粒を小さな球に見立てて、均等に並べると右図になります。このように土が並んでいる場合、隙間は約半分の48%になります。
 みなさん土壌3相という言葉をご存知でしょうか?土の中の「個体」「水」「空気」の割合です。理想的な3相は「個体:水:空気」が「4:3:3」となります。右図の状態だと少し隙間が足りません。
 さらにこの単粒構造の場合、踏みつけたりして圧力がかかると簡単につぶれてさらに押し詰まった形になってしまいます。この状態だと隙間がたったの26%になり、これでは植物は窒息してしまいます。
 では、理想的な3相はどんな土ならかなえられるのでしょう?それは団粒構造の土です。堆肥を入れると、堆肥の中の腐植物質や、微生物が分泌する粘液質などがのりの役割を果たし、土の粒子が固まった団子状の構造を作ります。こうなると、隙間は60%を超え、理想的な3相を作ることが出来るのです。
 また、有機物が豊富で微生物の活性が高い土は、押しつぶされにくいだけでなく、押しつぶされた状態からも隙間を広げていくことが出来ます。
単粒構造(正列)
単粒構造(正列) 孔隙率:48%

単粒構造(斜列)
単粒構造(斜列) 孔隙率:26%

団粒構造
団粒構造 孔隙率:61%
生物性の改善
 堆肥の中には様々な微生物がいます。また、団粒構造の土には様々な環境を好む微生物が住めるようになります。堆肥に含まれる微生物は、病気を起こさないだけでなく、施用された有機物や肥料を植物に吸収しやすくする善玉菌です。
 重要なのは土の中の多様性が増すことです。植物の病気は病原菌が異常に繁殖することから起こります。殺菌剤を撒いてすべて殺してしまうのも、病気を防ぐ方法ではありますが、逆に堆肥などを使って、色々な生育旺盛な微生物を入れてやることで、病原菌を薄めたり、食べ物の取り合いで病原菌を減らして行くというのも一つの方法です。
単粒構造(正列)
化学性の改善
堆肥のCEC=保肥力
CECの高い資材 土壌の保肥力はCECという指標で表されます。陽イオンを表す「カチオン:C」と、交換という意味の「エクスチェンジ:E」、許容量を表す「キャパシティー:C」の頭文字をとって、こう呼ばれています。平たく言えば、資材の表面にどれだけ肥料分をくっつけられるかということです。
 砂や火山灰などのようなCECが低い資材には、肥料をつなぎ止めることができないので、肥料を上から与えても、水をやるとどんどん流れ落ちてしまいます。これが肥料の流亡です。しかし、堆肥やゼオライト、粘土などのようにCECの高い物質は、アンモニウムやカリウム、マグネシウムやカルシウムといった肥料分(陽イオン)をしっかりキャッチし、植物の根がそこに届くまでキープしていてくれるのです。

リン酸の吸収促進
 日本の一般的土壌にはリン酸吸収係数が高いという特徴があります。これは土の中のアルミニウムイオンがリン酸と結合して水に溶けない物質に変わるために、せっかく施用したリン酸肥料が効かなくなってしまう現象です。この現象をリン酸固定といいます。植物は根から水に溶けた形の養分を吸い上げて生きていますから、水に溶けないということは、肥料の意味がないリン酸になってしまうのです。

アルミナとリン酸・腐植酸の関係
 土壌のアルミニウムイオン(アルミナ)はリン酸とくっつきたがる性質があります。このままだと、せっかく与えたリン酸肥料は、リン酸固定されて、使い物になりません。ところが、リン酸を与える前に、土壌に堆肥を入れておくと、アルミニウムイオンが大好きな堆肥の腐植が、先にアルミニウムと結合してしまうので、リン酸は固定されず、無事植物に利用されることができるのです。おなじようにCECが高い資材にゼオライトがありますが、ゼオライトは1価の陽イオンを好むのに対し、堆肥の腐植は2価や3価の陽イオンを好むという特徴があります。つまり、リン酸吸収の緩和には堆肥が最も適しているのです。

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